AirH"の体感速度を向上させるアプリケーション「Venturi Client for AirH"」が2003年12月になって一般プロバイダでも無料で利用可能となった.これまでPRINおよびDIONだけで利用可能だったわけだが,アプリケーション自体のバージョンも上がり,かなり快適になったのでレポートしようと思う.ちなみに,現在提供されているものの対応機種はWindowsのみであることは少し残念なところである.アプリケーション提供もとのVenturi Wirelessでは,PocketPCやMacOSに対応したものもあるようなので,やや残念である.今後提供を開始してくれるとうれしいが,いまのところ予定はないようだ.ユーザーの声が大きければ対応するかもしれないので暇な人は問い合わせをしてみるのもいいかもしれない.
はじめに
インストール
Venturi Client for AirH" Ver 2.3はVenturi Wirelessというアメリカのベンチャーが開発している画像やWordファイルなどを圧縮したりして体感速度を向上させるアプリケーションである.ウェブ閲覧だけでなく,FTPやPOP/SMTPなどのメールなども体感速度を向上させることができる.このようなアプリケーションは,最近ではさまざまなところが開発しているようであり,世界的にも帯域や周波数などが制限されるワイヤレス通信には重要なアプリケーションとなりつつある.Venturi Clientでは以下のような効果があると思われる.
- テキスト,画像,Word/Excel/PowerPoint/PDFファイルなどを圧縮
- ワイヤレス通信に独自に最適化したプロトコル(VTP)の利用
- キャッシング
インストールは簡単で,DDIポケットのダウンロードページから「Venturi Client for AirH"」をダウンロードして,「はい」とか「同意」とか「次に」などを押していけばすんなりと行く.ただし,アプリケーションの性質上,再起動が必要となる.インストールされると右下のタスクバーに‘V’のロゴが現れる.また,通信中にVenturi Clientが働いているとこのロゴが竜巻のようにグルグルと回るアイコンに変わるため,一部では通称として‘竜巻’だとか‘グルグル’だとか呼ばれている.同時に正式サービス名も‘トルネードweb’とアイコンを意識したものとなっている.
設定はまずロゴを右クリックすると現れる簡易的なものと,ダブルクリックで現れる詳細なものがある.このアプリケーションはパソコン側にインストールするクライアントアプリケーションとサーバー側にインストールするサーバーアプリケーションに分かれており,サーバー側はPRIN,DIONおよびその他の一般ISPとに分かれているのか,クライアント側にも設定が存在する.できれば一般ISP用のものをインストールした場合には,デフォルトで一般ISPのサーバーが選択されていると好ましいと感じた.その他には画像の非可逆圧縮の度合いを圧縮率小/中/大/最大と変えられたり,アクセラレータを利用するプロトコルを選択できたりする.まぁ,この辺りは以前のバージョンと変わりがないわけですが(^^;
テスト環境
測定を行った状況を簡単にまとめておく.いつもの通り都内の自宅マンションでの測定である.3階建ての鉄筋コンクリートの建物で,窓から1〜1.5メートル程度離れたところにて行った.比較的電波状況はいいところのようで,かなり多くの基地局を補足することができている.パソコンはほぼクリーンインストール状態のSONY VAIO PCG-SR9/Kである.そろそろ型的にはかなり古いほうになってきた.最近,PCカードスロットが壊れてしまい,Slipper Xを利用してAirH"端末(AH-S405C)を利用した.これはちょっと困っているのだが,修理に出すのもなんだなというところです.Venturi Clientは結構負荷が高いが,これくらいで利用できないようであればあまり汎用性はないだろうということでちょっと古い機種でやっているというのもある.
テスト環境 | |
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Accelarator | Venturi Client for AirH" Ver 2.3.110603 |
PC | SONY VAIO PCG-SR9/K |
CPU | Pentium3 600MHz |
Memory | 192MB |
OS | Windows2000 |
AirH" Card | AH-S405C |
Version | 1.01 |
電波状況(AT@K20) | 67,51,44,42,38,30,29,28,28,26,25,25,25,25,24,23,23,23,23,22 |
ISP | @nifty |
Course | ネット25(128kパケット方式) |
アクセラレータなしによる状態
通常の速度測定サイトの結果も載せておく.速度測定サイトでは画像などを利用しているところだとアクセラレータを利用すると極端に速度が大きいような結果がでる.これは画像を圧縮するものをそのまま効いてしまうので,体感速度がこれに値するということはない.また,FLASHなどを使ったものは逆にアクセラレータを使う場合と使わない場合にほとんど差がない.これはアクセラレータというものがあくまで「体感速度を向上するもの」であり,「通信速度を向上するものではない」ことによる.ということで,アクセラレータなしによる状態での速度計測は根本となる通信速度そのものを測定しておくということになる.それぞれの速度測定サイトにより3回測定し,平均値を算出した.結果としては,今回の環境だと通信速度自体はおおよそ80kbpsであるようだ.これはAirH"としては一般的な速度だと言える.固定状態なら50〜100kbpsくらいがAirH"128kパケット通信の速度と考えてもらえばいいと思う.RTTが32bytesをpingで飛ばすと250ms程度となっている.たまに回線が混雑しているときには300〜500msとかになるようだが(w
速度測定サイト | 平均速度 /kbps |
BNRスピードテスト(FLASH版) | 80.4 |
インターネット回線速度調査(低速) | 83.6 |
速度比較
体感速度
比較については体感速度ということでウェブ閲覧をいくつかのサイト(ケータイWatch/CNET/ZDNet Mobile/NIKKEI NET)を同時に見に行き,それらのページをすべて表示するのにかかった時間を測定し,比較した.データ転送の様子はTrayMeterというソフトを利用した.すべてのページを読み込み終わると無通信時間が増え始めるので,それを目安として稼働時間の差から読み込み時間を計測した.読み込みに利用したサイトは以下の4ページである.これらのサイトでは,自動で挿入される広告などの画像がその都度ファイルサイズが異なることから,受信バイト数も記録し,速度を算出した.それぞれ3回ずつ測定した平均値を以下の表にまとめた.一般的なニュースサイトなどは広告や画像が比較的多いと思うが,それでも1.3〜1.7倍程度の体感速度となるようである.また,以前のバージョンのZDNetのレビューと比較してもあまり変わらないように思えるが,比較に用いたサイトも違うし,一概にはなんとも言えない.また,最終的な読み込み時間というのは画像ファイルの圧縮に大きく依存しているので,体感速度に直結しないという可能性もある.今回のバージョンアップでは,画像圧縮部分はそれほど変わっていないが,プロトコルの最適化という部分でよりよくなったと考えるのがよいようだ.また,b-mobileの次世代アクセラレータ「b-384」などはページ内の表示順番を変えるというようなことでも体感速度を上げているそうなので,今後はこれらのアクセラレータの類を評価するのはより難しくなっていくんだろうと思われる.感性としてちょっと速くなったように感じるのが一番重要なことなのかもしれない(w また,ZDNetの記事にもあるように128kパケット方式よりも32kパケット方式での利用のほうが効果が高くなる.特に速く感じるのでお勧めである.
画像圧縮率 | 平均読み込み時間 /sec | 比率 /- | 体感平均速度 /kbps |
アクセラレータなし | 93.7 | 1 | 81.1 |
圧縮率 小 | 60.3 | 0.64 | 126.0 |
圧縮率 大 | 51.7 | 0.55 | 147.1 |
圧縮率 最大 | 49.3 | 0.52 | 154.1 |
体感速度
画像圧縮の様子を知るためにあるページ(ImpressのA5404Sの製品紹介)のキャプチャを載せておく.また,b-mobileのウェブアクセラレータの画像圧縮度合いとの比較などもまとめた.あくまで特定の画像のものなので参考までにという感じである.わかるのはb-mobileのウェブアクセラレータのほうが画像のファイル形式に限らず,細かく圧縮具合が設定されているように思われる.
画像圧縮率小 | |
画像圧縮率大 | |
画像圧縮率最大 |
まとめ
このような通信速度は変わらないが,体感速度をあげるというようなサービスは資源の限られているワイヤレスネットワークでは必須となる可能性が高い.もちろん,画像圧縮するくらいならテキストだけでウェブ閲覧をするという人もいるだろうが,テキストファイルも圧縮転送されているし,プロトコルを最適化したり,表示する順番を目的のものから表示するというようなものもでてきているので,体感速度は変わってくると思われる.一概に画像圧縮だけの話ではないので,是非AirH"をWindowsなパソコンで利用しているユーザーは検討してみてほしいと思う.ただ,現状ではまだVenturi Clientはバグが残っているのか,たまにアプリケーションがハングアップしたり,サーバー側のトラブルがあったりしているのか,きちんと動作しないときがあるのは今後の課題であろう.とはいえ,初期のPRINだけでサービスインした状況のころを考えると格段にサービスの質が向上してきており,期待は高まるところだ.携帯電話キャリアなども検討しているようだし,ちょっとした市場になると思っている.しかし,画像非表示でアクセラありなしって比較もしておくべきだったなと….しかも,段々こういうレポートが長くなっていくような気がする(w やばいやばい...
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- 圧縮プロキシ(AirH"で定額モバイル)
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(2004年1月3日)