2005年7月13日(水)~15日(金)に東京ビッグサイトで開催されている「Wireless Japan 2005」において、PHSチップメーカーの「ABIT(エービット)」がウィルコム向けの「W-SIM」モジュールや高速化対応チップなどを展示していた。ガラスケースの中に展示されていたPHS用チップセットは、左にあるのがこれまでの名称であった「R-SIM」と書かれた「W-SIM」モジュール、真中が「1xPacket Module」と書かれた参考端末、右が今年後半にウィルコムが対応する予定の高速化サービスに対応しているであろうチップセットを搭載したCFカード型サンプルとなっていた。
ABITのブースはWILLCOMのすぐ横に位置付けられている。 | 展示されていたPHS用チップセット。写真では確認できないが左上に「R-SIM」の文字が刻まれていた。 | 高速化対応PHSチップセットに対するテストシミュレーターなどの開発も行っている。 |
先日の7月7日(木)にあったウィルコムの「コアモジュール戦略について」の発表会や現在開催されいている「ワイヤレスジャパン2005」において展示されている「WILLCOM SIM STYLE」対応の「W-SIM」モジュールは、本多エレクトロン製「ERT-F3」となっている。しかしながら、発表会においてウィルコム執行役員である近氏によって「W-SIM」モジュールは複数社から提供されるだろうといったことが示唆されていたが、その一角がABITとなるようだ。ただし、発表会のときに聞いた話では、あまり多くのメーカーからモジュールを出しても競合が起きてしまうだろうとのことから、2~3社程度が開発していると見られる。
- WILLCOM コアモジュール戦略について(WILLCOM)
- 「WILLCOM Core Module」×「WILLCOM SIM STYLE」でより広いユーザーを掴めるか!?(livedoorコンピュータ)
また、高速化対応のCFカード型サンプルも実験環境では、良好に動作しているという話だ。400kbpsと書かれており、説明員からもそのように聞いたが、BPSKおよび8PSKに対応していることなどからウィルコムが年度内に開始する予定としている“384kbps(ザンパースー)”向けのチップセットを用いていると推測される。これまでABITは、2005年4月12日(火)~14日(木)に中国の海南島海口で行われた「PHS MoU Group」の総会において「PHSチップセット戦略」を発表している。それらと今回展示されているロードマップから細かい仕様が見えてくる。ちなみに、ABITによるとこれらのPHSチップセットはすべてウィルコム向けのものだという。中国向けなどはやらないのか?と聞いてみたが、大きな会社ではないためマスを保持することが難しいため、現在の方針では行わないということだった。つまり、これらのロードマップは一部、ウィルコムのロードマップそのものとなる可能性もある。一部と書いたのは、ABITのほかにも本多エレクトロンや京セラなど、PHSチップセットを開発しているメーカーが複数あるためである。説明員によると「本多エレクトロンさんはライバルです。」と笑いながら言っていた。思っているよりも競争原理などが働いているのかもしれないと思った一幕である。
ロードマップによるとすでに発売されている「AH-N401C」には「AX401」というチップセットが、「AX510N」には「AX402」というチップセットが使われてきたようである。もちろん、AX510Nは2RFであるので、2つのチップが搭載されているのだろう。ここから、2003~2004年にかけて開発された変調方式がBPSK/8PSKに対応したP1およびP2という高速化対応チップセットを用いたものが2005年後半~2006年初頭にかけて投入される予定となっている。これはウィルコムの計画の“384kbps”と時期的にも合致する。これらのP1およびP2チップセットの特徴をまとめると以下のようになる。
- 4xパケット方式で192kbps(200kbps)、8xパケット方式(2RF)で384kbps(400kbps)を実現
- シングルチップ・ミックスシグナルCMOS
- IF機能、RFエキサイタ内蔵
- BPSK/8PSKの2つの新変調方式に対応
- スロットダイバシティー、ハーフレートをサポート
- ADPCM/ハーフレート・ソフトCODEC内蔵
- PCカード、各種汎用I/F内蔵
- 最新プロトコルサポート
- デュアルCPU対応(SH-MobileおよびOMAP)
- 対応ソフトウェアで自営3版に対応
さらに、その後は2007年以降に1Mbps程度をめざして、変調方式を16QAM/64QAMまで変調方式を多値化していく、P3およびP4チップセットが計画されている。技術的には、MIMO(Multi-Input Multi-Output)やOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、Turbo-coding、RECMIMといったものの開発も視野に入れているようだが、これらはウィルコムが2GHz帯のTDD方式による新規参入をめざして策定中の次世代PHSシステム「PHS II」に取り入れられるだろう技術だとも取れる。本多エレクトロンらとともにウィルコムを支える、重要な企業だと思われるので、注目していきたいと思っている。
モバイルIPソフトスイッチをPHSに応用したネットワーク設備。 | ABITは1990年におけるデジタルコードレスホンの開発から数えて、PHS開発15周年となるそうだ。 | PHSチップセットおよびその対応ソフトウェアの仕様やロードマップなどが公開されている。 | PHS以外にもGSMやW-CDMA/UMTSなどの関連製品を開発している。 |
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